【ニュージーランドの国立高等教育機関】
ニュージーランド(NZ)のTertiary Education providers(大学レベルの第3次高等教育機関)は公立の機関に関して言えば、大きく分けてUniversityとInstitute of Technology(またはPolytechnics)の二つに分けられる。
そもそもNZにはUniversityは全国どこを探しても8校しかない。大学がビジネス化し、飽和状態にある日本に比べたら驚愕の事実だが、移民と留学生の存在を含んだとしても、人口450万人そこそこのこの国には立派な国立大学が8校もあるということはそれだけで十分であり、この少数規模がそれぞれの大学の特異性と専門性を高め、教育システムの品質を保つ役割を果たしているのである。8つある大学全てにおいて幅広い専門分野の選択が可能だが、それぞれの大学には強みもある。例えばオークンランド大学ではエンジニアリングと医学においては他の大学よりも設備が整っているとか、留学生に人気がある(レベルが上がる)とか、就職率がいいとか、そういった強みがある。また、医学部はオークランド大学(北島)とオタゴ大学(南島)にしかなく、歯学においてはオタゴ大学にしかない。しかし、農学・畜産学などを本格的に学びたい場合はマッセイ大学(北島)やリンカーン大学(南島)に行く必要がある…といった具合だ。
Name of University | City | Famous Major |
North Island | ||
Auckland University | Auckland | Engineering Medicine |
Auckland University of Tecnology | Auckland | Science Technology |
Waikato University | Hamilton | Finance & Management |
Massey University | Palmerston North | Agriculture & Animal husbandry |
Victoria University | Wellington | Law |
South Island | ||
Canterbury University | Christchurch | Engeineering |
Lincoln University | Christchurch | Agricultural science |
Otago University | Dunedin | Dental Science & Medicine |
大学と肩を並べる高等教育機関として、ITP(Institute of Technology & Polytechinicsの略)がある。一般にはTechとかPolytechなどと呼ばれることが多い。こちらも国立の機関だが、こちらは国立専門学校という要素が強く、専門分野において即戦力を発揮できるように専門的知識や技術を学ぶことに力を入れたカリキュラムになっている。UniversityとITPの違いを一言で簡単に説明すれば、Universityではコンピューターのプログラム構造を幅広く学ぶのに対し、ITPではプログラムの用途や応用の仕方を幅広く学ぶといった感じだろうか。選ぶ基準としては、Univeristyは8つの大学それぞれに「専門の強み」というものがあり、どのような系統の学問を勉強したいかによって決めるというのが一般的である。
Name of the Institute / Polytechnic | City |
North Island | |
Bay of Plenty Polytecnic | Tauranga |
Eastern Institute of Technology, Hawke’s Bay | Napier, Hastings, Waipukarau |
Manukau Institute of Studies | Auckland (South) |
Northland Polytechnic | Whangarei, Bay of Islands |
Tairawhiti Polytechnic | Gisborne |
The Open Polytechnic of New Zealand | Correspondence course (通信教育) |
UCOL(Universal College of Learning) | Palmerston North, Wanganui, Wairarapa, Levin |
Unitec New Zealand | Auckland (West) |
Waiariki Institute of Technology | Rotorua, Taupo, Tokoroa, Whakatane |
Waikato Institute of Technology | Hamilton, Te Haeata, Waitomo |
Wellington Institute of Technology | Wellington |
Western Institute of Thechnology | New Plymouth,Hawera ,Strantford, Rangiatea |
Whitireia Community Polytechnic | Porirua, Wellington, Auckland |
South Island | |
Aoraki Polytechnic | Timaru, Ashburton, Christchurch, Cunedin |
Christchurch Polytechnic Institute of Technology | Christchurch |
Nelson Marlborough Institute of Technology | Nelson, RIchmond |
Otago Polytechnic | Dunedin, Cromwell, Oamaru |
Southern Institute of Technology | Invergargill, Christchurch, Gore |
Tai Poutini Polytechnic | Greymouth, Auckland |
Telford Rural Polytechnic | Balclutha |
Aoraki Polytechnic | Timaru, Ashburton, Christchurch, Dunedin |
もちろんプライベート経営の教育機関は資本主義の法則にのっとり、ありとあらゆる分野にわたる教育機関が数えきれないほど存在する。入学条件も学費もカリキュラムや取得できる資格の種類もバラバラである。もちろんどの学校に通おうとも、授業についていけるくらいのある程度の学力と英語力は必要になるが、最も重要なのはそのProvider(機関)が卒業生に授与する資格がNZ国内で認定されているものであるかどうかということである。これは海外就職、進学、他国の大学機関への編入、そして移住のいずれかを視野に入れいてる人たちには大切な部分である。プライベート機関の中には、Diploma(準学士)だと謳っておきながら、実際の国の規定ではCerificate(証明書)だったなんてこともある。多額の入学費用や学費を支払い、苦労して卒業しても、実は受けてきた授業のカリキュラムは永住権申請時に必要なポイントの足しにもならないレベルのものだった…などということも実際にあり得るのだ。そこで国では国内・外問わず、すべてのアカデミック資格を国が定めた基準と照らし合わせて査定し、同じレベルに直して表記するという制度が取られている。その査定の全てを任されているのがNZQA(New Zealand Qualificaion Athority)である。例えば、「自分は日本で教員免許を取得しているのだけど、この資格をNZの資格に変換して就職活動ができるのか?」とか、「日本での最終学歴は高卒だけど、NZの大学で経済を学ぶためにはどんな準備をしたらいいのか?」とか、「自分は日本で大学院を卒業したのだけど、今度はNZの大学で全く違うことを勉強してみたい。どのレベルから始められるのか?」等といった複雑な質問に答えてくれるのがこのNZQAという機関だ。また、この機関はアカデミックな資格の査定以外にも、職業柄取得が義務付けられている資格のレベル査定や、専門的技術のレベルを具体的に査定し、証明してくれるという役割も担っている。
【ニュージーランドの教育制度とアカデミック資格一覧】
ニュージーランドのベーシックな教育制度は一覧にすると以下のようになっている。
小学校へは5歳の誕生日を迎えると同時に入学できるようになる。(法律では7歳の誕生日を迎えるまでに入学すればいいことになっているが、大抵は5歳で小学校へ進学していく。)Primary School(小学校)では基本的にYear0という新入生用の準備クラスを設けているところが多く、ある程度準備クラスの人数が集まったところでまとめてYear1のクラスへと移動させるというような形で、個人個人の学力差を縮めていくような政策を取っている。Primary SchoolはYear1からYear6まで、Intermediate School(中学)が次のYear7とYear8の2年間である。しかし、田舎の学校など人数が比較的少ないPrimary Schoolでは、このYear 7と8が併設されている場合もあり、それをFull Primary Schoolと呼んでいる。Year8が終われば全員Year9に進むことになるが、ここからがHigh SchoolまたはColllegeと呼ばれるようになる。いわゆる「ティーンネージャー時代」の始まりだ。ここからYear 13までの5年間がSecondary Schoolと呼ばれ、最後の3年間(Year11・12・13)はSenior Schoolとも呼ばれ、NCEA (National Certificate of Educational Achievement) という、Level1から3までの学力資格試験に向けての勉強が本格的に始まる。この辺りは受験勉強にいそしむ日本の高校生と同じだ。とはいえ、この試験は他人との競争を強いる類のものではなく、NZ国立の高等教育機関への進学を考える生徒たちの進路を決める上での指針となる、あくまでも個人的な学力テストだ。近年の高等教育機関への進学者率を上げる秘訣となった比較的新しい制度でもある。NZの義務教育は16歳まで。このNCEAを受けることなくYear11で教育を終えるものもいるが、こういった人たちが一旦社会に出た後で、後になって高等教育の必要性を感じ、大学やITPに戻る場合もある。その場合は、やはりこのNECAのLevel3、またはそれと同等の資格を有していなければ進学はできない。NZの大学は基本的に3年間の課程を履行できれば卒業となり、Bachelor(学位)が授与される。NZQAの査定レベルでいえば、Level7にあたる。日本の4年制大学と同等の資格である。(NZには一般教養の1年はなく、いきなり専門に入る)
NZQAが査定の基準としているLevel(レベル)をUniversityやITPで取得する学位と比較するとこのような感じになる。レベル4まではいわゆる修了証書であって、アカデミックな資格としてはほとんど認識されないが、例えばバリスタの技術を習得したとか、溶接工の技術を身に着けたとか、そのような場合はこれがNational Certificate Level3やLevel4という形で認識され、その方面の就職活動の際には自分のCV(履歴書)にしっかり記入するべき資格の一つとなる。Level10のDoctratesは基本的に学位2つ分というような感覚、つまり6年間は大学でリサーチをしたり、論文を書いたり、かなり専門的な知識と技術が求められる。通常はMastersで十分であるが、学者や医師などを目指す場合はこのLevel10が必要になる。(こういう人たちにはMr.やMrs.ではなく、いわゆるDr.というタイトルが与えられる)
NZの教育制度について簡単に説明してみたが、20代でNZの大学へ留学をするということは、少なくともNZで生まれ育った人たちが歩んできたPrimary・Middle School・Senior School時代をすっ飛ばし、日本の大学卒業を盾にLevel3とLevel4を無視して、そこから現地の人たちと肩を並べて勉強しようという輩になるということを意味するのだ。もちろん普通はそこに謙虚さがあり、1~2年語学学校で勉強して…となるのだが、それでもLevel1(Certificate)に到達できるかどうかというレベルかもしれないのだ。実際お恥ずかしい話、かくいう私も大学の入学審査試験に臨んだとき、Math(数学)のテストに於いてその非常に良心的な内容とは無縁の「数学的用語に対する知識不足」という部分で回答できない問題が結構あったのだ。
問題:「.」これは何か答えよ。
今でも覚えているこの問題。皆さんはきちんと回答できるだろうか?
答えは次回の更新で。
そう・・・問題は数学的知識でも数式読解能力でもない。単に「様々な分野における英語力」それだけなのだ。真剣に海外留学を検討している方たちには、とにかくいろいろな分野の文章に触れることをお勧めする。新聞とは言わない。幼児が読む絵本でもいいのだ。「難しい語彙やフレーズを学ぶ=語学の勉強」ではない事を心に留めて、効果的に勉強することが、一つ上の海外留学を成功させる秘訣なのである。