ワーキングホリデーと自分探しのタイミング

目的は何であれ、海外に長期滞在するためには「ビザ」と呼ばれる滞在許可証が必要になる。通常ビザは明白な滞在目的がある人に対して発行されるものだが、実はさほど明確な目的がなくても、プログラム提携国の国籍を持ち、受給資格年齢枠に入ってさえいれば簡単に取得できるビザがある。ワーキングホリデービザである。「一年間、働きながら旅行を楽しんだり自分探ししたりする事ができる」という、長期海外で生活してみたい人には大変魅力的なオプションだ。

「自分探し」という言葉は何となく格好よく聞こえる。これから未来へ羽ばたこうとする若者が、自分の可能性を探しに・・もしくは自分はどんな人間なのかを見いだすために、敢えて海外へ出て自己分析する…そんな風に聞こえるからかもしれない。

だが本当にそうだろうか?ワーキングホリデービザ利用者の多くは20代後半の人たちらしいが、その年齢になって初めて自分探しをするということに、私自身は少々違和感を覚える。


お小遣い欲しさと小さな憧れに背中を押されて、高校二年生でこっそり始めた生まれて初めてのアルバイトは、知り合いが経営していた近所のスーパーの靴売り場での接客業だった。そしてそれを皮切りに、まるで自分の背中に好奇心という翼を生やしたかのように、異なる種類のアルバイトを見つけては、全てやってみたくなった。

焼き肉店のウェイトレス・・中古車販売店の受付事務員・・塾の講師アシスタント・・スイミングスクールのコーチ・・早朝5時に起きのパン作り・・中央卸売市場の事務員・・家庭教師派遣会社のテレアポ・・NT●顧客への新サービス契約提案スタッフ・・携帯電話の販売員・・銀行の顧客窓口派遣社員・・居酒屋・・マクドナルド・・自動車部品工場・・高級腕時計の販売員・・エステサロン会社の企画営業・・選挙事務所のスタッフ・・・県民局推進プロジェクトメンバーの一員・・・中には、人に話すとギョッとされるような、「どこまで行っても人間の汚い部分しか見えてこない探偵業」や「生死と向き合うという臨場感たっぷりの斎場管理人」という職業まで経験した。また21歳からの1年半はボランティア活動にも専念し、毎日数え切れない人々との出会いを経験し、人生にとって大切なことをたくさん学んだ。

ざっと思いつくだけでもこれだけの仕事を、常に2つ・3つ掛け持ちしながら、どれも必ず最低3ヵ月以上、23歳で正社員の職に就くまで続けたのだ。今思えばそれは「世の中では何が起きていて、その中で自分は何ができるのか経験を通して見定めたい。」という気持ちの現れであり、私にとっての社会勉強の時間そのものだった。

当初私には日本語教師というキャリアを追求してみようかという気持ちもあったが、それを生業にしたいというほどの魅力は持てず、結局日本で大学に進学することはなかった。母の強い勧めもあり受験もし、大学に行くチャンスは得たが、土壇場で「果たして自分は何のために大学に行くのか?」その真意を見い出すことが出来ず踏み切れなかった。それならまず先に“現場”を通して本当に自分が進みたい道を見出して、それを追求するために必要であれば大学に行けばいいのではないか・・・という自分なりの結論を出したのだ。高校の恩師には呆れられたし、実際大学に行かなかったことへの多少の後ろめたさもあった。それが正しい選択かどうか確信はなかったが、そうしていなければ留学資金を貯めるために費やした私の貴重な時間と貯金は「何をしたらいいかわからないから取り合えず海外に行ってみる」という類の、ちょっと虚しいワーキングホリデーの1年間に消えてしまっていただろう。

結局私はとりあえず1年半の学生ビザで入国、まず英語学校に6ヵ月通い、その後旅行・観光学の専門学校へ通い、最終的にIATA (International Aviation Training Association)が提供する国際資格を取ることに決めた。資格を持って海外で就職すれば今までやってきた「社会勉強」を今度は世界に舞台を広げて続けられると考えたのだ。渡航後当初はNZに残って就職することはあまり考えてはいなかったが、卒業を意識し始める頃には、この国が自分にとって住みやすい場所であると感じるようになり、“もしここで就職活動をするなら、その時は虎の子のワーキングホリデービザを利用して就職活動してみよう。”・・・そう思い始めていた。

海外でずっと生活していこうとは思わない人にはピンと来ないかもしれないが、留学後も続けて海外で人生経験を積みたい、キャリアとして追求したいことがあるという人にとっては、ワーキングホリデービザはその道を開くために大変有効なビザである。そもそも海外で就職するには後にも先にもまず就労ビザ(ワークビザ)が必要である。通常、そのビザを得るためには、自分を必要な人材であると移民局に証明してくれる雇用主の存在が必要不可欠であるが、現地の言葉も文化も理解できない、その国の教育を受けていない、資格も経験もない外国人を、一体どこの企業がわざわざ欲するだろう?

だからこそ、サポートしてくれる企業がなくとも就労許可を得られるワーキングホリデービザを使えば、海外就職への道も開きやすいのだ。それなのに準備を怠ったまま、いきなりこのビザと軍資金を使ってしまうなんて勿体なくはないだろうか?

もしあなたがこれから海外でいろいろなことに挑戦してみたいと思っているのなら、「自分探し」とワーキングホリデービザを使うタイミングを間違えないようにとお勧めしたい。

 

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*前回の投稿で投げかけた算数の質問

Q「. 」は何か答えなさい。

の回答は、「a decimal point」(小数点)。簡単なのだが、英語でといわれるとなかなか出てこない人もいるのではないだろうか・・・。

 

ワーキングホリデーと自分探しのタイミング」への1件のフィードバック

  1. ワーキングホリデービザ利用の新しい考え方を聞けて目から鱗です。このビザは一見最初に使ったほうが良さげですが、実はその国に残りたいと思った時の助け舟ビザとして使うのが一番賢いですね。

    いいね: 1人

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