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ニュージーランドで生活していてよく感じることの一つに、誰もが「年齢」という枠にとらわれない生き方を楽しんでいるということがある。世の中ではアンチエイジングという言葉が飛び交っていて、女性としては確かにいつまでも若々しく居られるのは素敵なことだなと思う反面、本当のところは時の流れに逆らうことに固執しすぎたり、時間やお金を使いすぎるなんて馬鹿げていると思う。それよりも、どんなふうにこれからの人生を楽しむべきか、どういう年の取り方をしていきたいのかということについて考える方が賢明である。
生まれてきて人生が始まると、人は皆「始まり」に立つ。そして始まりに立った瞬間から、時間の流れに逆らうことなく素直に「終わり」に向けて歩き始める。始まった傍からいきなり終わりに向かって進んでいくなんて、考えてみれば矛盾しているように感じるかもしれないけれど、ここでいう終わりというのは、「生命的な終わり」という意味であって、自分の存在そのものが終わってしまうということではない。例えば、ある人にとって、生まれてから死ぬまでの時間が80年であるとしたら、その80年間、その人はずっと「終わりのない世界に向かって自分という存在は進歩し続ける」という意味。つまり、肉体の衰えとは反比例して、自分の存在(精神または魂と表現できるかもしれない)の価値はどんどん高まっていくということになる。そしてそれには終わりはない。
90才を目前にしてもまだ現役モデルを務めるDaphne Selfe(ダフネ・セルフ)はこう言う。
‟The beauty of aging is that you don’t have to worried quite much about everything or what you say or what you do, you can just do what you like.”
年を取ることの美しさっていうのは、もう些細なことなんて全く気にせず、自分の好きなことを言って好きなようにできるってことよね。自分がやりたいようにやればいいだけよ。
だけどこれを人生経験の浅い人が間違ってやってしまうと、それはただの「わがままで自己中心的な生き方」になってしまう。けれど、90年生きてきた彼女が胸を張ってそんな風に言えるのは、彼女が今まで周囲の人たちのことを考えながら一生懸命生きてきた証拠だろう。そういう人から発せられる「好きなように・・」の根底には、いつでも自分の人生経験から自然に心に沸いてくる他人への思いやりや、逆境に負けない(気にしない)強さがある。だから彼女の口からこういう言葉が出てきても、その裏に謙虚さを感じる。まだまだ人生半ばの私の心にも、じんわりと染み入る言葉だった。
真の美しさとは、自分の内面から生まれてくるもの。女性は、年を重ねるごとに美しさを増す生き物であることを忘れなければ、いつまでも輝いていられるだろう。